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Japan Data Science Consortium

AI科学革命

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  • by ObaNoriaki
  • in 人工知能
  • — 14 7月, 2016

前回に引き続き、最近の人工知能研究のトレンドを、今年の人工知能学会の発表からご紹介します。今回のポイントは「AIによる科学革命」です。

昨今のAIブームの影響か、従来AIと縁の薄かった異分野にAI技術を応用した研究の発表が多くあり、とても印象的でした。

例えば、脳のfMRI画像から、その時に見ている画像についての説明文を生成を試みたり図1[1]、自然言語処理の手法を用いてアミノ酸配列からタンパク質の三次元予測を行う試みがあったりと[2]、未だ道半ばではありますが、斬新かつ意欲的な研究が多数みられました。

図1

図1 脳活動データからの説明文生成(見ていた画像および脳活動データから生成した文章、[1]より作成)

 

しかし、特に驚かされたのは、既存研究に対して必ずしも新しくはないAI技術を応用するタイプのものです。 例としては、日本のお家芸の一つでもある材料科学におけるAIによる革新で、「マテリアルインフォマティクス」ともよばれています。今回の人工知能学会でもいくつか発表がありました。材料の基礎研究では、ある性質を理解するためにモデルを仮定し、そのモデルの正しさをシミュレーションと実験データとの誤差の小ささで評価するということが広く行われてきました。しかし、AIの技術を使えば、その何十倍もの速さで評価を行うことができそうです。多くの過去の研究は「試算」的なものが多く、この技術が広がれば過去の研究結果のかなりの部分が覆る可能性があると思われます。

このように、AIのブームによって関心をもつ人が増えたことにより、広い分野での応用が始まりつつあります。「AIによって低スキルな仕事が奪われる」という不安を抱えている方は多いと思いますが、案外「高スキル」とされてきた科学者のような職種こそ、仕事を奪われるのかもしれません。

 

 

[1]深層学習を用いた画像刺激による脳活動データからの説明文生成

松尾 映里 et al.  https://kaigi.org/jsai/webprogram/2016/pdf/168.pdf

[2]表現学習と深層学習を用いたタンパク質の相同性検索と構造予測

椿 真史 et al. https://kaigi.org/jsai/webprogram/2016/pdf/166.pdf

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Tags: AIサイエンス人工知能

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