病気を診断のために、医師とアルゴリズムのどちらを選ぶのか
0アルゴリズムの浸透
「アルゴリズム」が世の中にどんどん普及していくと聞くと、どう思うでしょうか?
まあ、そりゃあそうだよね、という反応や、今でも色々きっと使われてるんじゃないか? 色々便利になるなら結構なことなんじゃないのか? という中立からややポジティブな反応をする人が多そうです。このブログの読者であれば、それをビジネスチャンスと見る人や、数学的・データサイエンス上のチャレンジができる領域が増えて、結構なことだと思う人も居そうです。
実際の所、アルゴリズムは既に世の中の色んな所に活かされています。例えば東海道新幹線のN700Aは、「自分で判断して」運航する新幹線で、カーブの勾配や現在の速度をリアルタイムで判断しながら、最適な制御を行います。現在は災害などのトラブル発生時の遅れを取り戻す時に使われているそうですが、通常運行時に使わない理由は今後は乏しくなっていくように思います。
交通機関の自動運転は列車だけでなく、飛行機のオートパイロットや、ヨットのオートパイロット、Google Carもアルゴリズムが状況や現在の速度を判断し、運行を制御する例です。
ある程度の試行錯誤はあるでしょうが、Google Carも既にカリフォルニア州の公道を走っていますし、2040年までには自動車の運転免許が要らなくなるという人もいる位ですから、このトレンドが今後も続くことはある程度確からしいように思います。
医療領域はアルゴリズム不可侵の聖域なのか
では、アルゴリズムの医療利用というとどうでしょうか? 新幹線や自動車のアルゴリズムは良くても、医療判断のアルゴリズムについてはちょっと気持ちが悪いと思う人も多いのではないでしょうか。
そもそも、人間の体や病状、あるいは精神的な悩みなど、アルゴリズム化以前にデータ化できるんでしょうか? 万一アルゴリズムが不完全だったら? 重大な疾病の兆候が見落とされるのでは? 機械が悩みを聞いて共感してくれるんでしょうか? などなど、色んな疑問がわきます。やはり、人の命に関わる領域なので、人以外の介在は避けるべきなのでしょうか。しかし、人の命に関わるという事であれば、先ほどの交通機関の自動制御も一歩間違えば死亡事故に繋がる領域です。また、国家の安全保障も、国民の生命を左右する重要な領域ですが、ここでもアルゴリズムが活用されています。下のビデオは、複数の防衛拠点 (空港や港)をテロリストからの攻撃から守るため、どのようにパトロールするのが最適かを判断するCAIのアルゴリズムの例です。
ここでは、ひとまず「良いか悪いか」という価値判断は別にして、事実としてどうなのかを論じます。医療領域ではアルゴリズムが使われていないのでしょうか? 答えはNoです。事実としては、既に様々な医療領域での応用例が存在します。
医療領域におけるアルゴリズム
臓器移植のマッチング
臓器移植は、特定の臓器の機能不全に対する治療方法の一つです。しかし、誰かの臓器を、他の誰かに渡すという判断は簡単ではありません。もしあなたが医師で、その判断を委ねられたらどうするでしょうか? 例えば腎臓の機能がなくなって、このままでは命が危ない患者が2人いて、手元に新鮮な腎臓が1つあったら、どうやって選べばよいのでしょう?患者が2人しかいないのであれば、手元にある腎臓との適合度・患者の病状・年齢などを書き出して、慎重に相談して決める事にするかもしれません。
では、待っている患者が10人なら? 100人なら? 1,000人ならどうでしょう?アメリカで腎移植の順番待ちをしているレシピエント数は約100,000人います。一人一人長い時間をかけて検討するのは事実上不可能です。さらに、ペア・マッチングという手法があり臓器提供意思はあるが適合性が低いペアをたすき掛けにして掛けあわせ、移植を成立させることもあります。こうなると、人力での検討は困難です。
全米臓器分配ネットワーク UNOS(United Network for Organ Sharing)は、カーネギーメロン大学で作成されたalgorithmを活用し、従来の方法よりもはるかに多くのマッチングを成立させています。アルゴリズムを活用した医療価値の創出の高齢といえるでしょう。
この他にも、肺がんの早期発見のためのX線写真解析、患者情報を入力することで医師以上の精度で疾病を早期発見・特定できるアルゴリズム (IBMのpatient care and insights)など、実は既に使われているものは多いのです。
医療の未来はどうなるのか
(後日公開)
ヘルスケア領域でも、アルゴリズムの普及は例外ではない
- 命のことになると大丈夫? 怖い・・ など保守的な反応が起こりがちだ
Patient Care and Insights